Karuizawa Villa Hemerocallis	ホーム 第1-10章 第11-20章 第21-30章 第31-42章
軽井沢 ヴィラ・ヘメロカリス 　　　　　　　 第１７章 犯行声明 　　　　　　　 関連リンク： 愛という名のもとに DVD-BOX 鈴木保奈美　主演 君が好きだよ [　ＣＤ　] 佐野史郎 【　軽井沢　】 ミカド珈琲 トリュフショコラ	第１７章　犯行声明 　愛子はベッドで目を覚ました。 　時計を見ると、夕方の４時になろうとしていた。 　数時間、熟睡したお陰で、偏頭痛も熱も大分良くなっていた。 　愛子は起き上がって鏡の前に立った。 　髪はボサボサで、目の下にくまが出来ていた。 　何だか急に自分が老けたように思えた。 　愛子は、冷蔵庫から冷たい飲み物を出して、一息入れた。 　今日中に見なければいけない書類があることを思い出したので、社長室へ戻り仕事を始めた。 　しばらくして、ドアをノックする音が聞こえた。 「失礼し致します。副社長、今日の郵便物をお持ちしました」 　いつも郵便物を持ってきてくる女性社員が、怪訝な顔をして言った。 「届け物の中にこんなものがありましたが…」と一枚の封筒を差し出した。 　封筒には、「犯行声明文」と朱書きされていた。 　愛子は、封を切った。 　【　我々は、大規模開発を目論んでいる石墨専務を誘拐した。無事に帰して欲しければ、明日の午後３時までに３千万円を用意しろ。指示は明日、おってする。もし警察に通報した場合、専務の命はないと思え。ホテルには、我々のスパイが潜伏している。警察に通報しても無駄だということを肝に銘じておけ。尚、頂戴した金は、全額を自然保護団体に寄付する。これは悪を挫くための正義の誘拐である　】 　愛子は、郵便物を持ってきた女性社員に、急いで幹部たちを呼んでくるように命じた。 　数分後、幹部たちが社長室に集まった。 　皆、困惑顔を連ねていた。警察に通報するのが最善策に思えたが、ホテルの中にスパイがいるという文章が、一同は凍りつかせた。 　幹部たちは、互いに視線を交わしあいながら疑心暗鬼になっているようだった。 「スパイがいると書いてますが、これは幹部の中にいるという意味でしょうか？」 　稲葉が、尋ねた。 「幹部の人間とは限らないと思うけどな。一般の従業員かも知れねぇし、若しかしたら宿泊客に紛れているのかも知れねぇな」 　柳沢が、話した。 「何れにしても、スパイがホテル内にいるとなれば、警察が来て、ホテルが物々しい雰囲気になれば、通報した事はばれてしまいますね」 　総務部長の土屋が、眼鏡の奥の目を光らせた。 「所で、寛司はどうしただ。まだ、熱海で油売ってるのか、あの馬鹿は」 　会長の健一郎が、愚痴った。 　愛子は寛治の携帯に電話したが、繋がらなかった。 　何度目かの電話で、ようやく寛司が出た。 　健一郎は、愛子から受話器を取り上げて、怒鳴りつけた。 「この馬鹿もんが、今直ぐ、飛んで軽井沢に戻ってこい」 　第１７章　終了 　→　第１８章　：　愛人の秘密　へ 　→　このページのトップへ戻る
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