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第１７章 オダマキの庭
札幌の初夏の空は澄み渡るように青々としていた。
その青空の下で、和子庭でガーデニングに精を出していた。
花壇には、青いオダマキの花が咲き誇っていた。
札幌では気候が合うらしく、札幌の庭々には、オダマキがよく咲いている。
和子は、札幌の庭の中でも、私が育てたオダマキが一番綺麗だという自負があった。
参考写真 ： オダマキ
ガーデニングをしていると、郵便屋が和子宛の手紙を持ってきた。
差出人には、「菅山有紀」と書かれていた。
有紀から手紙なんて初めてのことだ、何だろう？
若しかして、ポールタウンの地下街で会った時に、私に嫌味を言った事への謝罪文だろうか…と思った。
和子は居間に行き、ソファーに座って、封筒を開けた。
手が思わず震えた。
手紙の主は、有紀ではなく昔の恋人の真之だった。
文面からすると、どうやら、真之は、一度会って話をしないと納得できないようだ。
仕方がない。
顔を付き合わせて、はっきりと言ってやれば納得するだろう。
それにしても、誰から噂を聞いたのだろう。
全く持って迷惑な話だ。
今まで波風立てずに過ごしてきたのに…
真之との関係は、自分なりに清算して吹っ切れている。
もう過去の遺物で、忘れ去った遠い日の思い出でしかない。
いわば、恐竜の化石のようなものだ。
遠い過去、地球上には恐竜がいたました。
しかし、それは既に絶滅し、古い地層から化石として見つかるだけ…
それだけの存在だ。
自分が今、愛しているのは夫や子供たちだ。
しかし、手紙を見ると、真之はまだ未練が残っているようだ。
百合が原公園で会った時は、20代半ばぐらいの女性と一緒に歩いていたが、まだ結婚はしていないという話をしていた。
聡明そうな瞳に、すっきりとした顔立ちが、自分の若い頃の姿に似ていると思った。
「私なんてもう、いい年したオバサンなのに。馬鹿だね、あの人は」
和子は独り言をボヤキながらも、自分の事を想い続けている真之にほんの少しだけ情愛の感情を覚えた。
来週の水曜日には用事はなかったので、出掛けることはできる。
和子は、家族で使っている信書棚ではなく、他の場所に手紙を隠した。
しばらくすると、息子の幸明が学校から帰ってきた。
幸明は、玄関の上がり框にランドセルを放りなげると、サッカーボールを持って、早速、遊びに出て行った。
「幸明、何処行くの？」
「農試公園でサッカーして遊んでくるよ。将ちゃんたちと約束したんだ」
「晩ご飯までには、ちゃんと帰ってくるのよ」
「ほーい、分かってるよ」
「返事は、ハイって言ってるっしょや」
「ハイ、ハイ。したら、行ってくるね」
幸明は、返事する時間も惜しいというような素振りで駆けて行った。
第１７章 終了
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