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金子ノブアキ 写真集
単行本（ソフトカバー）
ハーマン・テディベア
イヌ
チャウチャウ 30cm
Rhythm & Drums magazine
2010年 07月号
(CD付き)[雑誌]
《アートフォトフレーム》
ポプラ並木1
上富良野町
〔富良野・高橋真澄〕
ポプラ物語
[単行本]
＝ 内容 ＝
W.クラークによるキリスト教精神に基づく札幌農学校に学び、思想も行動も時代の最先端を走り、労働運動の先駆者・片山潜とも交流のある森広とはどのような人物だったのか?
そして、思想を共にした内村鑑三、新渡戸稲造らクラークの弟子たちに息づく志とは―?歴史が大きく動いた明治初期へ思いを馳せる壮大なるルポルタージュ。
（「BOOK」データベースより）
エルムの杜
ポプラ並木の四季
(Bee books) [大型本]
＝ 内容 ＝
大都会札幌の真ん中に膨大な広さの北海道大学がある。
そこを人々は都の杜、エルムの学園と呼んでいる。春にはツツジや桜が咲き乱れ、5月には有名なポプラ並木の新芽が出はじめる。
地球から森が消えないで欲しいと願って撮られたエルムの杜とポプラの写真集。
「MARC」データベースより
金子ノブアキ
RUDO (ルード)
2010年 09月号
[雑誌]
金子ノブアキ
RUDO (ルード)
2010年 06月号
[雑誌]
 
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第１８章 犬の探偵さん
幸明は二つ年上で隣に住む将太や同級生のたちと農試公園のグラウンドでサッカーをしてボールを夢中になって追いかけた。ブラジル代表のロナウジーニョの真似をしてフェイントしたりノールックパスをしたりしたが如何せんテクニックがないので、とんでもない方向にパスが行った。
幸明は同級生の中ではサッカーが上手かった。物心付いた頃から近所の農試公園のグラウンドで先輩の小学生らと一緒にサッカーして遊んでいたのでサッカーには自信があった。作文にも将来の夢はサッカー選手と書いた。地元のコンサドーレ札幌の赤いユニフォームを着るのが夢だった。土塗れでサッカーに夢中になっていると日が暮れて薄暗くなってきた。
最近は、日が長いので外で遊ぶには願ったり叶ったりだが時間を忘れてしまうのが、たまに傷だ。時計を見ると６時半を回ろうとしていた。やばい家の夕食の時間は六時半だ。ママに叱られてしまう。サッカーを止めて帰路についた。
公園の出口へ向かって歩いていると埃塗れの服を着た若い男が生垣の間からワニのような格好で這い出てきた。思わず変質者でも出たのかと驚いて足を止めた。
汚れた青年は立ち上がって上着の埃を手で払うと独り言を言った。
「おかしいな。ここら辺にいると思ったんだけどな…」
「オジサン何してるの？」年長の将太が話しかけた。
「おお、少年たち。ちょうど良い所に」
「はぁ、何がちょうど良いの？」幸明は首を傾げた。
「この公園で、こういう犬を見かけなかったかい？チャウチャウっていう種類の犬なんだ」と犬の写真を見せた。
幸明たちは写真を見ながら各々言いたい事を喋った。
「顔がでかくて短足だな」
「何だかライオンのぬいぐるみたい」
「こんな弱そうな犬なら、うちの猫と喧嘩しても負けるんじゃねぇか」
「俺んちの犬はハスキーだぜ。なまら格好いいんだ。こんなワンコだったら数秒で倒しちゃうよ」
「ハスキーは顔が恐いよ。俺んちのシロはサモエドなんだ。これが、なんまらめんこい顔してるんだわ」
「何だよ、二人とも外国の犬かよ。俺んちは、柴犬だぜ。やっぱり日本人は柴犬だって父さんが言ってたさ」
「そういえば昨日ポプラ並木の向こう側で散歩してるお爺さんが小さい犬に餌あげていたけどな…その犬かな？」
「たしか、この写真の犬みたいな感じのモサモサした犬だったな」
「本当かい？君、そこまでお兄さんを案内してくれないか？」
「お兄さんってオジサンのことかい？」
「オジサンなんて失礼なこれでもまだ25歳だよ」
「25歳なら立派なオジサンだよ」
「まぁ、オジサンでもいいや。兎に角、犬を見かけた場所まで案内してくれ。お礼は弾むよ」
幸明たちはポプラ並木の近くの生垣に案内した。青年は地面に這いつくばって生垣の下をくまなく探した。奥の方で犬らしき小さな物体が動くのが見えた。青年はポケットから一片のサラミを出して生垣の前において口笛を鳴らした。しばらくすると、薄汚れた小さな犬がモソモソと出て来て青黒色の舌を出してサラミをペロリと食べた。もう一片のサラミを出して犬に食べさせながら頭を撫でてスッと犬を抱かかえた。
「ありがとう。お陰で迷子の犬を見つける事が出来たよ。したら少年たち。大志を抱け」青年は背を向けて歩き去ろうとした。
「ちょっと、オジサン」将太は青年の背中の服を掴んだ。
「お礼を忘れてるっしょや」
「あれ、やっぱり覚えてたか…」
「約束を守ってもらわないと大志もへったくれもないっしょや」将太は臆面も見せずに青年に向かって掌を差し出した。
「じゃぁ、１人１００円ね」
「えぇ、マジで。今時１００円じゃ缶ジュースも買えないよ」
「贅沢を言ううんじゃない。俺だって安月給で働いてるんだ。１円を笑う者は１円に泣くんだぞ。」
「ちぇっ、しけてるな。しょうがねぇな、オジサンは貧乏そうだしな」幸明たちは青年から１００円ずつ貰った。
「所で、その犬は、オジサンの犬なの？」幸明が尋ねた。
「いや俺の犬じゃないんだ。迷子犬の捜索依頼があって、それで探してたんだ。いやぁ、君たちのお陰で任務を完了する事が出来たよ。ありがとう」
「へぇ、じゃぁオジサンはドッグトレーナーみたいな仕事をやっているの？」
「いや探偵だよ。」
「へぇ探偵だなんて格好いいな」幸明は感嘆の声を上げた。
「嘘だーい。探偵が犬なんか探さねぇべや」将太が怪訝そうな目つきをした。
「探偵と言っても俺は下っ端だから時にはこう言う仕事をするんだ。まぁ、小学生には分からないかも知れないが社会で生きて行くのは大変なんだよ」
「僕のパパもよく会社の事を愚痴ってるよ。働かせるだけ働かせて給料は殆ど上がらないって」幸明は父の口振りを真似して言った。
「そうなんだよ。男は社会に出たら３人の敵がいるっていうからね。まぁ、何れにしても、ここで君たちにあったのも何かの縁だ。もし何か困った事があったら名探偵に相談してしてくれ。僕が解決して上げるよ。世界中のＶＩＰが顧客だから途轍もない探偵料がかかるが君たちの場合、特別に安くして上げるよ」青年は自信あり気に胸を張った。
「そうだ名刺があったな。これ渡しておくよ。もし良かったらお父さんやお母さんに渡しておいて」青年は少年たちに名刺を渡した。
「オジサン。上手い事言って営業活動かい？」将太が、突っ込んだ。
「君はなかなか鋭い事を言うな。それに営業なんて難しい言葉を良く知ってるね？」
「俺の父さんはサラリーマンで営業やってるんだ」
「なるほど、それでか。商売の基本は営業だからね。それに、ここら辺の地域で逃げ出した犬や猫は農試公園に逃げ込む事が多いんだ。ここの公園は住宅街の中の広い緑地になってるからね。もしまた、この公園で探してる姿を見かけたら協力してくれよ。何れにしても今日は、ありがとう。君らのお陰で助かったよ。したら、少年よ、大志を抱けよ。さらばだ」
農試公園のポプラ並木
青年は鼻歌を鳴らして機嫌良さそうに去って行った。犬を抱えた青年の後ろ姿を見ながら将太が言った。
「迷子の犬を探してて名探偵になれるのかな？」
「さぁね？でもきっと名探偵も時には泥まみれになって戦わなくちゃいけない時があるんだよ」
幸明は青年の背中を見ながら手の平の１００円玉を握った。するとグーッと、お腹の虫が鳴った。母が夕ご飯を作って待ってくれている自宅に向かって走って帰った。
第１８章 終了
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