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| 神成探偵社の 事件簿 １ -支笏湖に消ゆ- |
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カモメと夏の思い出
第２８章 一人ぼっちのカモメ 由美子の頭の中は混乱した。 平手打ちをされた上に、由美子は父の子供でないかも知れないと罵っていた。 由美子は、マウンテンバイクに乗って、遮二無二、ペダルを漕いだ。 生まれて初めての家出だった。 「当分、帰ってなんかやるもんか」と心の中で叫んだ。 無我夢中で自転車を漕いでいると、前田森林公園まで来た。  参考写真：前田森林公園（ Wiki-pediaより） このまま道路を真っ直ぐ行けば海に出る。 由美子の家がある札幌市発寒から海までの距離は１０キロほどだった。 何度か家族で海に遊びに行った事があったので、何となく道は覚えていた。 手稲区を過ぎると小樽市に入った。 平坦な道だったので、いつも農試公園でマウンテンバイクを乗りこなしている由美子には苦にならなかった。 防風林の中に伸びる道を進んで行くと、広大な大浜海岸の砂浜が広がっていた。砂浜には、ハマナスが棘々しい枝を蔓延らせて、可憐なピンクの花を咲かせていた。石狩湾の青い海が、囁くような波音を立ていた。海の彼方は霞みながら空と交わっていた。水平線の左手には、小樽へと続く山並みが見えた。  参考写真：大浜海岸の風景（North Dream Web siteより） 由美子は、自転車から降りて砂浜を歩いた。 夏休みともなれば、大浜海岸は海水浴客で賑わうが、初夏の今は、人っ子一人いなかった。 蕭然とした潮騒の音だけが、由美子の心を和ませた。 砂浜を歩いていると、大きな流木が横たわっていた。 由美子は、その流木に腰を掛けて海を眺めた。 カモメが一羽、潮風に乗って上空を過ぎっていった。 由美子は、カモメを見上げながら、心の中でカモメに話しかけた。 「カモメさん。あなたも一人ぼっちね。私も一人ぼっちだけど、泣いてないよ。偉いでしょ、私、泣いてないもん」 そう思うと、我慢していた涙が、ポロポロと頬を伝った。 カモメが、一鳴きして海の方へと飛んで行った。 第２８章 終了 → 第２９章 ： 厄日 へ → ページトップへ 
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