朝比奈颯季　ネット小説　神成探偵社の事件簿1～支笏湖に消ゆ～　第５６章：神成の推理

第51-64章

神成探偵社の
事件簿１
-支笏湖に消ゆ-

第５１章

第５２章

第５３章

第５４章

第５５章

第５６章：
神成の推理

第５７章

第58章より
Members Only

Member
登録方法へ

Members Only
入口へ

関連リンク：

東京情緒食堂
2010-2011
SpecialEdition
(東京カレンダーMOOKS)
[大型本]

冷静と情熱のあいだ
Blu
竹野内豊　主演
[DVD]

「WITH LOVE」
ONCE IN A BLUE MOON
長谷川天
イメージ・アルバム

竹野内豊　カレンダー
2003

FLIX (フリックス)
2008年 05月号
[雑誌]

輪舞曲
ロンド
DVD-BOX

できちゃった結婚
DVD-BOX

　第５６章　神成の推理

　星は、病院を出て、探偵事務所に戻った。

　　　

　

　
　事務所で、報告書を作成し、社長の神成に提出した。
　神成は、報告書を一通り読んで言った。
「捜査は難航しているようだな」
「えぇ、緩くないですね。特許盗用事件とひき逃げ事件が複雑に絡み合っていて、正直言って先が見えません」
　星は、弱音を吐いた。
「そういう時は、事件を個別に分析しないと、絡まった糸を解けないぞ。先ず、ひき逃げ事件から議論してみようか」
「分かりました。先ず最初の依頼である由美子ちゃんの父親に掛けられた容疑を晴らすという任務は完了しています」
「残件は、被害者の発見という事だが…犯人の証言によると石狩湾に捨てたということだが、海に捨てたのか？それとも浜に捨てたのかは分かっているのか？」
「いえ、分かっていません。犯人である三ツ橋は既に首吊り自殺に偽装されて殺害されてしまい証言の裏が取れません」
「例の苔の洞門の殺人だな。ちなみに、石狩湾への死体遺棄に関しての目撃証言はあったのか？」
「今の所、目撃証言はありません」
「という事は、三ツ橋が嘘を付いている可能性もあるわけだな…そうだとすれば遺体のない殺人だな」
「しかし、どうして三ツ橋が嘘を付く理由があるんですか？僕にはその理由がわかりません」
　星は、目を閉じて考えた。

「さぁ、それは俺にも分からないよ。だが、三ツ橋の死には不審な点が多い。何故、三ツ橋は殺されなければいけなかったのか？」
「三ツ橋製薬の社長からの密命でしょう。殺害されたヤクザは、竹上、三ツ橋、葉山の全員を抹殺する指令を受けていました」
「しかし、殺す側のヤクザが、逆に殺害されてしまったのは何故かな？ちなみに、警察に探りを入れた所、司法)解剖の結果、遺体からは睡眠薬が検出されたようだ」
「ヤクザの殺意を察知した三ツ橋たちが、先に手を打って、ヤクザを眠らせてから殺害したんだと思います」
「俺もその推理には賛成だ。だが、ヤクザを殺害した後、三ツ橋は何故、殺されたのだ？犯人の動機は何かな？」
「犯人は、共犯者の葉山美絵だと思います。警察も葉山美絵を指名手配しています。ただ、女一人では首吊り自殺を偽装するのは難しいので、もう一人共犯者がいると思います」
「殺害状況から言うと、共犯者が居る可能性は高いだろう。警察やお前の推理通り、葉山美絵が犯人だと仮定しよう。すると、何故、二人は仲間割れをしたんだろう?」
「何故だろう…」
　星は、頭を抱えた。

「おそらく、葉山美絵にとって見過ごせない行動を三ツ橋が取ったせいだろうな」
「その見過ごせない行動って何ですかね？」
「それは俺にもわからん。それを解明するのがお前の仕事だろう」
　そう言って、神成は口元を緩ませた。
「そういえば、三ツ橋は、883という不思議な数字を残して死んでいった」
「おそらく、そのダイイングメッセージも殺された理由と関係があるだろうな。もう一度、基本に立ち返って頭を整理してみることだな」
「分かりました。再度、推理し直してみます」
「次に、クライアントが安浦芳恵の特許盗用に関しては、三ツ橋、葉山、竹上の共犯という事が判明したから完了でいいのかな？」
「まだ残件があります。実験データが、誰がどのようにして持ち出したのかが分かっていません」
「その犯人の目星(めぼし)は付いているか？」
「聞き込み結果から推理すると、研究室を途中で辞めた速見という男が怪しいですね。速見は辞める直前、急に金回りが良くなったています。ライバル関係であった鈴木の研究結果を、三ツ橋准教授に売って高額な報酬を得たのではないかと疑っています。しかし、彼が何処にいるのか足取りがつかめていません」
「その件は道警本部長に頼んでみるよ」
　神成は、そう言って、足を組み替えた。

「ありがとうございます。所で神成さん、数日前に、特捜部が三ツ橋製薬について調べていると言っていましたが、その後の捜査は進んでいるんですか？どうやら、裏で糸を引いているのは社長のようなんです」
「捜査は進めているが、三ツ橋製薬も抜け目なくやっているようで、家宅捜索の決定打がないのが現状のようだ。特捜の方でも札幌の事件を注目していて、この事件が解決の突破口になることを期待している」
「そうですか…特捜も進展はないですか。他力本願では駄目という事ですね」
「そうだな。事件の全容解明は、お前の頭脳と体力に掛かっているから、頑張ってくれよ。
そうだ、小太郎さん。清田さんからの浮気調査とDNA判定の案件はどうなってますか？」
　神成は、浮気調査を担当している北條小太郎に質問した。
　北條は、白髪に精悍な顔立ちをした探偵社一の年長者だ。

「清田文忠氏の依頼案件に関しては、クライアントに報告済みです。結果から言うと、昔の恋人とは喫茶店で密会しておりましたが、逢引という感じではなかったです。無論、ラブホテルなどでの不倫もありませんでした。また、清田氏の娘に関するDNAの結果は、検査会社に依頼中です。ただ、先方も忙しいようで順番待ちで結果が出るのは一ヶ月後の予定です」
「そうですか…一ヵ月後ですか。予想よりも時間がかかりますね。確か、検査対象の清田さんの娘は、ひき逃げ事件の被害者ですね」
「えぇ、そうです。クライアントの清田文忠氏からは、娘が行方不明中なので、もし遺体が発見されらた、キャンセルにしたいという旨の連絡は受けています」
「DNA検査は発注済なので、クライアントには、キャンセル料が発生する事は伝えておいて下さいね」
　経理担当の香代子が、話に加わった。

「えぇ、その件は、清田氏に伝えています」
「しかし、皮肉なものですね。DNA鑑定を依頼した娘が殺されてしまうなんて…」
　星はそう言って、溜息を吐いた。
「あなたが元気なくしてどうするのよ。最後まで希望を捨てないで捜査しないと、解決できる事件も解決できないわよ」　
　香代子が、星の肩を叩いて元気付けた。
「香代ちゃんの言う通り、沈んでいてもしょうがない。今晩は景気付けにススキノに飲みに行くか」
　神成が、言った。

「飲みに行きたいは山々ですが、何時、緊急事態の連絡があるかも分からないし、飲んじゃうと車の運転が出来ないので止めておきます」
「そうだな…したら、事件が無事解決したらパーッと楽しい店に連れて行ってやるよ。最近、めんこいロシア美人が入った店があるんだ」
「本当ですか？楽しみにしてますよ」
「あら、そんな、いかがわしい店に星くんを連れて行くんですか？」
　香代子が、不機嫌に言った。
「いかがわしい訳じゃないよ。ただ隣に座ってお酒をつんでくれるだけだよ。それに、美人と言っても香代ちゃんほど、めんこい子はいないよ」
「そんな歯の浮くようなお世辞言っても駄目ですよ。社長の与太話に付き合ってたら時間が勿体無いわ。さぁ、仕事、仕事」
　香代子は自分の席に戻って、パソコンのキーボードを叩いて、仕事を再開した。

　第５６章　終了

　→　第５７章　：　恵庭渓谷の死体　へ
　
　→　このページトップ　へ戻る