関連リンク：
レプリークBis
(HANKYU MOOK)
[大型本]
上川隆也
山下智久 主演
あしたのジョー
＜Blu-ray＞
プレミアム・エディション
（特典DVD付２枚組）
山下智久 主演
クロサギ DVD-BOX
NEWS 山下智久 Photo&Episode Dynamic
(RECO BOOKS)
[単行本（ソフトカバー）]
山下智久
お宝フォトBOOK 輝(Ki) (RECO BOOKS)
[単行本]
|
第４９章 朗報と悲報
真之は、眠いまなこを擦りながら、教授室でモーニングコーヒーを飲んでいた。
昨晩は、学会のために札幌に来た研究室の教え子と飲んで少々飲みすぎてしまった。
窓を開けて朝日を浴びながら、濃いコーヒーを飲んでいると芳恵から電話が入った。
「もしもし、おはよう。真之さん、今、話は大丈夫？」
「あぁ、大丈夫だ。何か新しいことがわかったか？」
「竹上は、今朝、逮捕されたわ。それと共犯の葉山と三ツ橋も、警察が行方を追っているわ」
「予想以上に警察の動きが早いな。まだ、特許訴訟の判決も出ていないというのに…罪状は何だい？」
「真之さん、落ち着いて聞いてね」
「あぁ、俺は、いつも冷静だよ」
「報告するか迷ったけど、何れ分かることだから報告するわ。竹上が逮捕された罪状は、ひき逃げよ。由美子ちゃんをひき逃げした犯人が、竹上なの」
「な、何だって‥」
「証拠隠滅のためひいた由美子ちゃんを車で拉致して、三ツ橋准教授に引き渡したそうよ」
「何？三ツ橋もひき逃げに関わっているか」
「そうよ。そして、残念なことに、竹上の証言では、三ツ橋准教授は、由美子ちゃんを殺害して石狩湾に捨てたそうよ」
「ま、まさか‥、そんな馬鹿な」
「今、三ツ橋准教授の行方を追っている所よ。捜査に進展があったら、直ぐに電話するわ」
携帯電話を持つ真之の手が震えた。
狂いそうなほど、怒りがこみ上げた。
そして、憤怒が殺意へと変貌した。
暫くして、ドアをノックする音が聞こえた。
「鈴木です。入っていいでしょうか？」
「ちょっと待ってくれ、今、足の踏み場がないほど部屋が散らかっていてるんだ。すまんが、１５分後に来てくれないか」
真之は、嘘を言った。
少し心を落ち着ける時間が欲しかった。
「分かりました。それではまたお伺いします」
真之は、残ったコーヒーを飲み干して大きく深呼吸をした。
１５分後、鈴木が再びドアをノックした。
「鈴木です。中に入って宜しいですか？」
「あぁ、待たせてすまんな」
「失礼します」と鈴木が入ってきた。
「嬉しい知らせだぞ、鈴木。特許を盗用した奴らの尻尾を捕まえた」
「えっ、本当ですか？」
「実行犯は、三ツ橋とつながりのある竹上という男だった。治験で巧妙に新薬を持ち出し、三ツ橋に売りつけたらしい。葉山美絵という女も事件に絡んでいた。うちの研究所に営業に来ていた女だ。色仕掛けで仕事を取ろうとした、あのアバズレだよ」
「そうですか、あの彼女が…」
「逮捕は時間の問題だ。そういえば、今日は午後から、三ツ橋の発表が予定されているな。自分の化けの皮が剥がれたとも知らずに、さぞかし得意気に発表するんだろうな。滑稽な話だ」
真之は勝ち誇った顔で高笑いをした。
「壇上で発表中に逮捕されたら、尚のこと
滑稽ですね」
「そうだな。たくさんの関係者が見ている前で逮捕されれば、いい見せしめだ」
「所で、西嶋さん。これ頼まれていた特許関係の資料です」
鈴木が、分厚いファイルを手渡した。
「個別の詳細なデータは、データベース上にアップデートしておいたので確認しておいてください」
「ありがとう。学会の準備もあるなかすまなかったな」
「今月は、さすがにちょっと疲れましたね。学会が一段落したら一週間ぐらい休みをもらっていいですか？」
「そうだな、ここ数ヶ月は休日返上で頑張って貰っていたからな。一週間と言わず、半月ぐらい休みをやるから、ゆっくり旅行にでも行ってこい」
「そんなに休み貰っていいんですか？」
「ああ、いいんよ。リフレッシュしないと良いアイデアも浮かばないし、視野が狭くなる」
「ありがとうございます。それじゃ、バカンスを貰って、世界の秘境めぐりの旅にでも行って、珍しい薬草でも取ってくるかな」
「それじゃバカンスにらなんだろう。相変わらず研究の虫だな」
真之は、苦笑した。
「まぁ、バカンスを兼ねた研究ということで。さて、バカンスの話は置いておいて、ちょっと、研究室に顔を出して来ていいもいいですか？未樹ちゃんと今後の実験について話をしたいことがあるので」
「いいとも。俺は、そろそろ会場に向うよ。お前も用事が終わったら会場に行ってくれ」
「用件が済んだら持ち場に向かいます」
鈴木は、お辞儀をして、教授室から出て行った。
真之は大きく溜息を吐いた。
鈴木と会話をしている時は、何とか怒りを顔に出さないようにし、冷静に振舞っていた。
鈴木が退室して部屋に一人になると、再び怒りが込み上げてきた。
「許せない」と叫んで、机を激しく叩いて、三ツ橋の悪態をついた。
真之は、教授室を出て実験室にこっそり入った。
学生たちは、学会の持ち場に向ったらしく、実験室には誰も居なかった。
薬品棚の鍵を開けようとしたが、既に開錠されていた。
学生たちには、いつも薬品の管理には気を付けろと言っているのに…と真之は小言を言いつつ、扉を開けて、新薬が入った小瓶をポケットに忍ばせた。
瓶を持つ手が震えていた。
人間一人を殺せるだけの薬の量だ。
薬品棚に鍵を掛けてから、何食わぬ顔で学会の会場へと向かった。
第４９章 終了
→ 第５０章 ： 支笏湖の殺人 へ
→ このページトップ へ戻る
|
|
