朝比奈颯季　ネット小説　神成探偵社の事件簿1～支笏湖に消ゆ～　第４４章：支笏湖の湖底へ

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神成探偵社の
事件簿１
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　第４４章　支笏湖の湖底へ

　竹上は、こめかみに銃口を向けられながら、ハンドルを握り、ゆっくりと湖畔を走った。
　１００ｍほど走ると、渚に壊れかけた木舟が置かれていて、傍らにもう一人の男が立っていた。
「そこで止まれ。ほな、エンジン切って、鍵はダッシュボードの上に置けや。それと、さっき書いた遺書もな」
　助手席で、拳銃を向けながら男が言った。
　竹上が車を下りると、背後から強引に押し倒されて、後ろ手にされて両手首と足首を縄のような物で縛られた。
「俺を殺す気か？」
竹上は、恐怖に戦(おのの)きながら声を張り上げた。
「その通りや。ほな、やったれ」
　男が命令すると、もう一人の男は、ウィスキーのボトルを取り出した。
　男は無理矢理、竹上の上半身を起して、多量のウィスキーを強引に飲ませた。

「支笏湖は、溺死しても、遺体が水草に絡まってあがらならしいからな。お前さんの醜く膨らんだ姿は、誰に見られることなく、魚の餌になるさかい、安心してあの世にいけ」
　男は、にやけて言った。

　若い男が、竹上の喉元を、岩の様な手でギューッと圧迫した。
　竹上は、息ができずに体を震わせた。
「手荒にして窒息死させるなよ。せっかくの偽装がばれてしもうたら意味がないやろ」
　竹上の喉から、岩のような手が離れた。
竹上は、顔から地面に落ちた。そして、更に引っ張り上げられて、口にウィスキーを突っ込まれた。
「冥土の土産に教えたる。死ぬのはお前だけやないから安心せぇ。先に三途の川で、仲間の二人を待っとれや。そういえば、三ツ橋が、お前がひき逃げした女の子を、石狩湾に沈めて来たらしいな。きっと三途の川で、ろくろ首みたいに、首をながーくしてお前を待っとるで。はっはっは」
　朦朧としていた竹上は、男の高笑いが終わらないうちに、意識を失った。

　二人の男は、竹上の手足を縛っていた縄を解いてから、穴の開いたボロ舟の上に竹上を乗せて、湖上へと進ませた。
　穴の開いた小舟は、支笏湖の水面を滑るようにして、静かに沖へと進んで行った。

　第４４章　終了

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