朝比奈颯季　ネット小説　神成探偵社の事件簿1～支笏湖に消ゆ～　第３８章　二つの依頼

第31-40章

第41-50章

第51-64章

神成探偵社の
事件簿１
-支笏湖に消ゆ-

第３１章

第３２章

第３３章

第３４章

第３５章

第３６章

第３７章

第３８章：
二つの依頼

第３９章

第４０章

第４１～５０章

関連リンク：

Love Song
加藤夏希写真集
[単行本]

「愛していると云ってくれ」
中島みゆき
♪　試聴可能　♪
No.6 ミルク32

マンデリン
スーパーグレード　200g
原産国：インドネシア共和国
焙煎度合：フルシティロースト

図解入門業界研究
最新医薬品業界の
動向とカラクリが
よーくわかる本
How‐nual Industry
Trend Guide Book
[単行本]

ビッグ・ファーマ―
製薬会社の真実
[単行本]

シビック&インテグラ
TYPE R伝説
HONDA BOYS Rのすべて [DVD]

プレ・サレ焼尻・
北海道焼尻島産
スライス肉（機械切）

　第３８章　二つの依頼

　星は、神成探偵社の事務所に電話した。
　香代子が出た。
　香代子は、探偵社のお局(つぼね)的な存在で、事務的な仕事を切り盛りしている。

「もしもし、星です。先日、発寒であったひき逃げ事件で、ご家族から正式に調査を依頼されたんです」
「やったじゃない、星くん。あなたには初めての本格的な探偵の仕事ね。ようやく犬猫探偵から卒業ね」
「ようやく一人前の仕事ができそうです」
「でも、うちは人手が足りないから、当分は、犬猫の仕事もやってもらうわよ。我が社にとっては、重要な収入源ですからね」
「えぇ、マジっすか」
「当然っしょや」
「まぁ、犬猫もがんばりますよ。それとですね、ひき逃げ事件と絡んでいるかも知れないんですが、特許の盗用についての調査依頼も貰ったんです」
「一挙に二件も仕事を取るなんて大したもんじゃない。その調子で、バンバン仕事を取って来てね」
　香代子の声は、明るかった。

「それでですね。その特許の方なんですが、依頼人の主張によると、先端医薬研究所の研究結果を、三ツ橋製薬が盗用したらしいんです」
「先端医薬研究所は、確か数年前に作られた研究機関よね。確か、その頃、地元のマスコミでも、産学協同で札幌の新たな産業に成長する、なんて大々的に取り上げられていたのを覚えているわ。でも、三ツ橋製薬って会社は良く知らないわね。三共製薬の栄養ドリンクなら、箱詰めで社長の引出しに入っているけどね。最近は、社長も暇なはずだから、栄養ドリンクを飲むほど、仕事しているようには見えないけどね」
　香代子は、社長の神成孝二郎に向けて、皮肉を浴びせた。

「三ツ橋製薬は、京都に本社がある中堅の製薬会社です。民生用には殆ど販売せずに、主力は、医療機関への業務用の薬だそうです」
「ふーん、そうなの」
「そこでお願いなんですけど、三ツ橋製薬に付いて、詳しく調べて置いて欲しいんです」
「分かったわ。社長は今日も暇そうだし、ガンガン栄養ドリンク飲んで、働いてもらうわ。さぼってた分を、取り返してもらわないとね」
「したら、宜しくお願いします」
　星は、電話を切った。

　星は、芳恵から竹上の住所を聞いて、彼のアパートに向った。
　しかし、駐車場に車は停まっていなかったし、部屋にもいなかった。
　アパートの住人に尋ねてみたが、近所付き合いがないらしく、竹上の情報はあまり得られなかった。
　その後、葉山の自宅に車を飛ばしたが、こちらも同様に、蛻(もぬけ)の殻だった。

　その後、芳恵が待ち合わせに指定した喫茶店へ車を走らせた。
　彼女が調査した資料を自宅から持って来てくれる予定だった。

　木造の扉を押してはいると、星に向かって、マスターが控えめな会釈をした。
　星がマスターに、ミルク入りのコーヒーが好きだと言うと、マンデリン豆のフレンチローストを勧めてくれた。
　一緒に運ばれてきたミルクをたっぷり入れて、カフェオレにした。

　カフェオレを飲みながら芳恵が来るのを待った。
　ミルクをたっぷり入れたコーヒーを飲んでいると、芳恵がやってきた。
　芳恵は、鞄をテーブルの上に置いて、調査資料を取り出した。
　資料の中には、竹上や葉山の写真が入っていた。

「かなり本格的に調べたんですね。プロ顔負けですよ」
「そうでしょ。私は執念深い性質だからね」
「先ず、ひき逃げ犯と思われる竹上という男について説明して頂けませんか？」
　星はテーブルの上に、何枚かの竹上の写真を置いた。

「竹上と葉山が、三ツ橋准教授の所に出入りしている事は掴んでいるわ。
竹上は、数年前まで大学に通っていたらしいだけど、２年生ぐらいで大学に行かなくなったそうなの。そして、今もも休学中よ」
「休学して何をしてるんです？」
「一度、尾行してみたら、大通公園でマジックの大道芸をしてたわ。でも、それだけで十分な稼ぎが出来るとは思えないけど、アパートは立派だし、自動車も持っているわ。何処で稼いでるのかしらね？」
「親からの仕送りででしょうか」
「したけど、大学を休学して遊び呆けてる息子に、そこまで親も仕送りするかしら」
「確かに、芳恵さんの言う通りですね。所で、竹上は何学部ですか？」
「経済学部よ」
「そうですか。したら、これから経済学部に行って、ちょっと聞き込みをしてきますよ。さて次は、葉山美絵という人ですが、この人は竹上の恋人ですか？」
「恋人と言えば恋人ね。でもこの葉山って女、かなりのアバズレよ。どうやら、三ツ橋准教授とも肉体関係があるみたいなの。それに、他にも男が何人かいるみたいね」
「したら、三角関係っていう事ですか？」
「そうなるわね」
　芳恵は、口元に、笑みを浮かべた。

「所で、葉山は、何の仕事をしているんですか？」
「表の顔は、医薬品の販売会社の営業社員よ。簡単に言うと、病院や薬局に薬品を納める仕事ね。特殊な試薬なんかも扱っていて、うちの大学にも研究用の薬品を納めているわ。真之さんの研究所にも、営業に来たらしいわ。札幌の医薬業界では、それなりに信用のある会社みたいよ」
「という事は、葉山は仕事の関係で三ツ橋と知り合ったということですかね」
「そう考えて間違いないわね」
「三ツ橋准教授は、三ツ橋製薬の社長の弟なのさ。特許の出願者の中にも名前が出てるし、絶対に怪しいわ」
「三ツ橋に関して、他に何か分かる事はありますか？」
「私と同じ大学の准教授だから、色々調査はしているわ。住所は、札幌市の真駒内。地下鉄南北線の南の終点駅からほど近い住宅街に住んでいるわ。
　家族は妻と、小学４年生になる一人娘がいるわ。夫婦仲は良いみたいね。旦那が浮気してると知ったら、どうなるか知らないけどね」
　芳恵は、悪戯っ子のようにニヤついて、話を続けた。

「何れにしても、今の所は上手くやってるみたいよ。それに、三ツ橋准教授は、一人娘を溺愛してるらしいわ。それと、支笏湖畔に別荘を持っているらしいわ。夏休みになると、毎年、研究室の学生を連れて遊びに行くみたい。うちの研究室には、そんなイベントがないから、羨ましい限りだわ」
「支笏湖に別荘ですか。リッチですね」
「彼の父親は三ツ橋製薬の創業者で、兄がその会社を継いでるわ。基本的に、ボンボンの御坊ちゃまよ。あと、学生の評判は、可もなく不可もなくって所ね。
　それに三ツ橋准教授の研究室の博士課程の学生に聞いたんだけど、今回、問題になっている特許の研究は、三ツ橋教授が今までやって来た研究内容とはかけ離れているから、研究室内でも疑問の声が上がってるらしいわ。助教授は、三ツ橋製薬の研究者と共同研究したと言い張ってるらしいけど、眉唾ものね」
「なるほど、何となく全体像が見えてきました。それにしても、良く調べ上げましたね。僕なんかよりも、芳恵さんの方が探偵みたいですよ」
「そうかしら。したら、男ばかりのむさっくるしい研究室を辞めて、あなと同じ探偵社にでも入ろうかしら」
「そんな、もったいないですよ。せっかく、博士になれるのに」
　星は、本気で反論した。

「そんなに本気にならないでよ。冗談よ」
「そ、そうですよね、失礼しました。さて、したら動き出しますか。先ず、僕は、竹上が休学している大学に行って、色々と探ってきます。芳恵さんは、葉山と三ツ橋の方を探って貰えますか？」
「了解。終わったらまた連絡するわ」

　星は、芳恵と喫茶店で別れて、車に乗り込んで大学に向って車を走らせた。

　第３８章　終了

　→　第３９章　：　多額の報酬　へ
　
　→　ページトップへ